2019 年 39 巻 7 号 p. 1221-1225
空腸憩室穿孔は術前診断が困難なまれな疾患である。68歳のアメリカ人男性が上腹部痛と炎症所見高値のため当院を紹介受診となった。上腹部に圧痛を認めるも筋性防御は認めなかった。腹部CTでは小腸間膜内に膿瘍形成と30mm大の内部に含気を有する構造物を認めた。空腸GISTの穿孔も否定できず,空腸穿孔,腹腔内膿瘍の診断で緊急手術を施行した。上部空腸の癒着を剝離すると膿汁が流出した。Treitz靭帯から約75cmの空腸の腸間膜側に憩室の穿孔を認めた。穿孔部を含めて約20cmの小腸を部分切除した。切除標本の憩室内にはセロファンと思われる膜様物が3枚迷入しており穿孔との関連が示唆された。異物が穿孔に関与していると考えられた空腸憩室穿孔の1例を経験した。消化管穿孔の原因としてはまれな疾患であるが,画像診断機器の進歩もあり近年では術前に診断できる報告が増えている。