今回われわれは若年者に発症した極めてまれな非閉塞性腸間膜虚血症(non─occlusive mesenteric ischemia:以下,NOMI)の症例を経験したので報告する。症例は31歳女性。家族歴・既往歴に特記事項なし。妊娠41週1日に前医で誘発分娩で出産した。分娩後大量出血のためショック状態となり,救急車で当院搬送となった。入院後の血管造影検査で左子宮動脈から造影剤の血管外漏出を認め,選択的子宮動脈塞栓術を行うも,その後のCTで子宮左側壁の破裂と出血所見を認め,同日,緊急で単純子宮全摘術を施行した。その開腹所見で,終末回腸10cmから50cmの範囲に分節状の壊死所見を認めたため,小腸部分切除術を施行した。術前CTでは上腸間膜動静脈は良好に描出されており,また,術中所見でも腸間膜内の血管の拍動は保たれており,NOMIと診断した。術後は第5病日に経口摂取を開始し,第7病日にドレーンを抜去した。術後経過良好で第18病日に退院となった。本例は31歳と若年で心疾患などの基礎疾患を有してはいなかったが,分娩後の大量出血を誘因としてNOMIを発症したと考えられる貴重な症例であり,若干の文献的考察も含めて報告する。