2009 年 29 巻 7 号 p. 1041-1043
症例は81歳,女性。2008年4月,左肺下葉原発の腺癌(cT3N2M1 StageIV)と診断され,化学療法を勧められたが本人希望により無治療で経過観察となっていた。同年6月より右臼蓋骨転移に対する除痛を目的とした放射線照射療法のため入院加療中であった。入院14日目に突然の下腹部痛が出現したため,当科紹介となった。腹部造影CTで腹腔内に散在するfree airを認め消化管穿孔による急性腹膜炎と診断し,同日緊急手術を施行した。開腹すると回腸に穿孔を認めたため回腸切除術を施行した。病理組織学的に肺癌小腸転移と診断された。術後経過は良好で経口摂取可能となったが,原疾患により全身状態は徐々に悪化し,術後81日目に死亡した。肺癌小腸転移は頻度は低いものの,穿孔を起こした場合の予後は不良である。肺癌患者で腹部症状を呈する場合には,消化管転移の可能性についても留意する必要がある。