2021 年 38 巻 3 号 p. 163-167
小児甲状腺癌においても初期治療は手術が基本である。甲状腺切除範囲についてはガイドラインも含め,海外では甲状腺全摘術が勧められている。日本においてはかつて成人のみならず,小児例においても腺葉切除術を標準術式としてきた施設が多く,良好な成績も示されている。海外からの報告は臨床的危険因子を勘案せずに全摘術と腺葉切除術での再発率を比較し,全摘術の優位性を示したものが多い。しかし,成人同様,危険因子の有無に応じたリスク分類を模索し,治療方針を検討することが望ましい。本稿では当院での経験例をもとに得られたリスク分類を紹介し,小児甲状腺癌においても,リスクの応じた手術の有用性を示した。一方で,発生率が少ない本症であるため,一施設でまとまった症例数を集積するには,長期間を要する。そのため,医療機器の精度の変遷があるため,過去と現在での症例における診断精度の差違があることが否定できない。