2008 年 33 巻 1 号 p. 64-73
今回われわれは,中間顎の萎縮による広範な顎裂と著しい上顎の劣成長を認めた両側性唇顎口蓋裂患者を治療する機会を得たので報告する.患者は31歳の女性で,摂食障害および顔貌の審美障害を主訴として当科に来院した.そこで,顎裂閉鎖に対しては水平的歯槽骨延長を両側から行って顎裂を縮小させた後,新鮮自家腸骨海綿骨を移植して顎裂を閉鎖した.上顎劣成長に対しては骨延長術によって上顎前方移動を行った.次いで,上顎に対しては部分床義歯,下顎に対してはインプラントを用いて咬合改善を行った.その結果,顔貌形態および咀囎機能は満足行くものとなった.