唇裂鼻変形におけるmaxillary Platformの変形の影響を評価するため,初回手術時にミラード法とランダル法を主とした口唇形成と,IC切開からの大鼻翼軟骨挙上を主とした外鼻修正を施行した22名の唇顎口蓋裂患者のCTヴォリューム・データを,画像解析ソフトを用いて解析した.
口唇の二次修正,または顎裂部骨移植を施行する直前の,各患者の中顔面部のCTヴォリューム・データを用い,以下の項目についてコンピュータ画像上で計測し,各項目問の相関性について統計学的に解析した.
(1)両側の鼻翼基部の軟組織の厚さの比,(2)硬組織上の水平的顎裂幅,(3)硬組織上の顎裂の前後的深さ,(4)両側の鼻翼溝最外側点から顔面正中までの水平的距離の比,(5)両側の梨状孔最外側点から顔面正中までの水平的距離の比.
その結果,唇顎裂症例では,(1)と(3),(2)と(3),そして(4)と(5)の問にそれぞれ,有意な正の相関が認められた.唇顎口蓋裂症例でも,(4)と(5)の間に有意な正の相関が認められた.
これらを統計的処理した結果,厚い軟組織を有する症例においては顎裂の幅が大きいこと,また,鼻翼溝と梨状孔の非対称性についても数量的に明らかな相関性があることが分かった.
以上のことは唇顎口蓋裂を有する症例において,対称性の良好な外鼻を得るためには,裂部に隣接する歯槽部の形態的改善と梨状孔の対称性の獲得が重要な意味合いを持つことを示す.