日本口蓋裂学会雑誌
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二段階法における軟口蓋閉鎖後の硬口蓋裂の推移
小野 和宏大橋 靖高木 律男永田 昌毅飯田 明彦今井 信行神成 庸二早津 誠
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1996 年 21 巻 3 号 p. 126-141

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抄録

二段階口蓋形成手術法では,軟口蓋閉鎖後に残存する硬口蓋の破裂が縮小することを経験する.しかし,これについて経時的に詳細な追求はなされておらず,どの様な経過で硬口蓋の破裂が変化し,どこまで小さくなるのか,またどうして縮小するのかについては明らかではない.そこで,硬口蓋閉鎖まで終了した二段階口蓋形成手術例53症例を対象に,軟口蓋閉鎖時の1歳6か月から硬口蓋閉鎖時の6歳まで経年的に採取した上顎歯槽模型を用いて,硬口蓋に残存する破裂の変化を縦断的に分析した.得られた結果は以下のとおりである.
1.破裂幅径は4歳まで経年的に減少し,その後は硬口蓋閉鎖まで有意な変化はみられなかった.
2.前方部破裂幅径は,片側顎口蓋裂では約85%の減少率であったが,両側顎口蓋裂では約45%とわずかであった.一方,後方部破裂幅径は裂型により差はなく,いずれも約半分に減少した.
3.片側顎口蓋裂2例では,破裂の著しい縮小により,硬口蓋部破裂のみかけ上の閉鎖が認められた.
4.歯槽弓幅径が減少しないことから,破裂幅径の減少はsegment破裂縁の正中側への成長によると考えられた.
5.硬口蓋部破裂の縮小に鼻中隔の関与はみられなかった.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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