日本口蓋裂学会雑誌
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原著
口唇裂・口蓋裂における構音重症度評価の試み
―構音正発率と構音点の後方化による評価―
緒方 祐子手塚 征宏今村 亜子新中須 真奈松永 和秀西原 一秀中村 典史
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2013 年 38 巻 1 号 p. 77-85

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抄録

口唇裂・口蓋裂の言語評価において,構音障害の重症度は判定する評価方法が少ない。そこで,構音障害の重症度を判定するため,構音検査での構音正発率算定と構音点に着目したbacking scoreの評点化を試みた。
1.口蓋裂術後の構音障害の評価での構音正発率の算定
口蓋形成術後の口唇裂・口蓋裂患者67例を対象に,構音検査法での単語検査での構音正発率を算定し,構音障害の種類や会話明瞭度との関連を検討した。構音障害と構音正発率をみると,いわゆる口蓋化構音と声門破裂音は,有意に他の構音障害と比して,低い結果であった(p < 0.01,0.05)。会話明瞭度では,「よくわかる」の1°は有意に構音正発率が高い結果であった(p < 0.01)。
2.構音点のbacking scoreによる評価
構音点が後方化する口唇裂・口蓋裂患者13例を対象に,構音点がどの程度,後退しているか数値化するbacking scoreの評価表を考案し,聴覚判定に基づく構音点の後方化の程度の評価を試みた。[s],[t],[ts]および[ɕ]産生時の聴覚判定が評価された。次に,正常構音と構音異常の構音点のズレをbacking sore(0~12点)とした。その結果,声門破裂音や軟口蓋化構音などはbacking scoreが大きく,本来の構音点より後方化がみられた。構音正発率とbacking scoreの関連をみると,backing scoreが大きいほど構音正発率が低下していた。構音正発率とbacking scoreは相関していた(r= -0.8)。
以上のことから,共鳴の異常ではなく,構音点の同定が可能である構音障害であれば,構音正発率とbacking scoreで評点化することにより,構音訓練の効果を知ることが可能であることが判明した。それらは構音の重症度や明瞭度の客観的指標として有効なフィードバックとなるのではないかと考えられた。

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© 2013 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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