日本口蓋裂学会雑誌
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シンポジウムI
口唇・口蓋裂治療:未来へのネットワーク―理想的なチーム医療を目指して― 東北大学病院の挑戦
今井 啓道館 正弘佐藤 顕光今川 千絵子五十嵐 薫中條 哲徳川 宜靖横山 奈加子幸地 省子
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2013 年 38 巻 1 号 p. 35-40

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抄録

唇顎口蓋裂の治療には,医科・歯科,メディカル・パラメディカルの垣根を越えた多くの専門家の結集が必要です。東北大学病院においても,形成外科と歯科・顎口腔機能治療部による医科と歯科の連携を徐々に構築し治療成績の向上をはかってきました。しかし,医学部附属病院と歯学部附属病院が道を挟んで別々であったことから,患者の動線はけっして良いものではありませんでした。また,耳鼻咽喉科や言語聴覚士との連携はグループ診療の域を超えず,治療成績の評価と治療法の改善を十分に行い得てはいませんでした。2009年の東北大学医学部附属病院と歯学部附属病院の統合による新外来棟の設置を機に,これまでの問題を解決するためにセンター化を計画し2010年に東北大学病院唇顎口蓋裂センターを発足しました。本センターでは専用の外来ブースを設置することはあえてしませんでした。代わりに形成外科,歯科・顎口腔機能治療部,歯科・言語療法室,小児科を同一フロアに集約して,患者の動線を単純化するとともに,各科の担当医が診療中に行き来することが可能な配置としました。また,耳鼻咽喉科には専任の担当医を配置し,口蓋裂滲出性中耳炎専門外来を他科と同一曜日に設置しました。センターを運用して1年半が経過しましたが,この外来形態により緊密な連携が実感され,患者の負担も軽減されています。
一方,チーム医療を実現するためには,診療科間での信頼関係に基づく相互評価と情報の共有が必要です。そのため,カンファランスを充実させ定期的に治療成績を集計報告する体制を取るとともに,イントラネットを利用した治療情報の共有化を積極的に行っています。
将来的には医科と歯科との連携を基礎研究まで含めた包括的連携に発展させるとともに,多施設間とも人材交流や情報の共有化を通じてチーム医療を構築できればと考えています。

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© 2013 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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