日本口蓋裂学会雑誌
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原著
矯正歯科治療開始前の口蓋裂患者の顎顔面形態
仲宗根 愛子須佐美 隆史内野 夏子井口 隆人岡安 麻里上床 喜和子高橋 直子大久保 和美森 良之高戸 毅
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2013 年 38 巻 1 号 p. 113-119

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抄録

口蓋裂患者の顎顔面形態は,上顎後方位,下顎下縁平面の急傾斜,上顎前歯の舌側傾斜などの特徴を示すことが報告されてきた。しかし,個々の症例では,上顎前突を示すものから反対咬合を示すものまで臨床像は様々である。今回われわれは,東京大学医学部附属病院に来院した口蓋裂患者の矯正歯科治療開始前の顎顔面形態について検討した。
対象は矯正歯科治療開始前の歯齢IIC~IIICの日本人口蓋裂患者50名(女性35名,男性15名)である。裂型分布は,硬軟口蓋裂28名(HS群),粘膜下口蓋裂11名(SM群),軟口蓋裂11名(SP群)で,平均年齢は8歳3ヶ月(5歳9ヶ月~11歳9ヶ月)であった。資料は側面頭部X線規格写真を用い,(1)SNA,(2)SNB,(3)ANB,(4)下顎下縁平面角(MPA),(5)上顎前歯歯軸傾斜角(U1-FH),(6)下顎前歯歯軸傾斜角(FMIA)を計測し,日本人基準値と比較検討した。
検討の結果,口蓋裂患者の平均顎顔面形態は,上顎後方位,骨格性III級,下顎下縁平面急傾斜,上下顎前歯の舌側傾斜の傾向を示したが,その程度は軽かった。一方,個々の症例をみると,著しい上顎前突を示すものから,著しい下顎前突を示すものまで幅広い分布を示し,上顎前突傾向を示すもの(ANB > 6°)が約3割認められた。この要因として,下顎が小さいことに起因して二次的に口蓋裂を発症するRobin sequenceの症例が多く含まれていることが考えられ,今後,口蓋形成前の裂や下顎の大きさの情報を得て明らかにしていくことが必要と思われた。

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© 2013 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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