聴能言語学研究
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〈失語か非失語か-診断と治療の方向性を探る-〉言語-行為-行動の臨床意味論
鈴木 淳
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1993 年 10 巻 1 号 p. 79-85

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抄録

脳損傷による言語障害者が抱える問題に関して,これまで言語治療士が行ってきた臨床評価は,主に言語学的および神経心理学的観察にもとづいている.しかし,患者の言語病理を理解し,治療的な関わりを試みる根拠としては不十分だと考えられる.すなわち,〈意味〉の共有が図りにくい患者の病態と心理を了解するためには,治療士がもつ考え方の枠組をシフトさせることが必要である.
そこで,筆者は,まず記号学的な観点を導入し,言語の〈差異化〉作用を認識することが,患者の言語病理を理解する上で有用であることを論じた.次に,治療関係・治療構造が言語臨床の内容・経過に直接影響を及ぼすことを指摘し,患者-治療士関係における治療士の〈役割〉の取り方について論じた.

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© 日本コミュニケーション障害学会
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