理論と方法
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小特集 日米数理社会学・合理的選択シアトル会議
非家族ネットワーク喪失の規定要因におけるジェンダー差:
固定効果モデルを用いた失業と貧困の効果の検証
永吉 希久子
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2017 年 32 巻 1 号 p. 114-126

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抄録

 社会的排除の視点からみれば,社会的ネットワークからの排除は,失業(労働市場からの排除)や貧困(経済的次元での排除)など他の次元における排除の帰結として生じると考えられる.しかし,クロスセクションデータを用いた研究では,個人の観測されない異質性の影響を除外できないため,失業や貧困それ自体がネットワークからの排除を促すのかが明確ではない.本研究ではパネルデータをもとに固定効果ロジットモデルを用いた分析を行い,失業や貧困状態への移行という個人内の状態変化が家族外でのサポート・ネットワークの喪失に与える影響を検証した.さらに,その効果のジェンダーによる差についても分析を行った.分析の結果,失業や貧困による非家族ネットワークの喪失は男性についてのみ生じることが示された.また,加齢によるネットワークの喪失も男性のみにみられた.一方,結婚は男女ともに非家族ネットワークの喪失を促していた.女性のサポート・ネットワークが社会経済的な次元での排除に頑健であるのに対し,男性のネットワークは脆弱であること,また,結婚がネットワークを縮小させる負の側面を持つことが示唆される.

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© 2017 数理社会学会
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