理論と方法
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特集 コンピューター支援調査の可能性
モード比較研究の解くべき課題
杉野 勇俵 希實轟 亮
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 30 巻 2 号 p. 253-272

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抄録

 本論文は,調査モードに着目しICTを活用した調査方法およびそれを用いた実験的調査を紹介し,方法論上の諸課題を明らかにする.まずは,CAI(Computer-Assisted Interviewing)におけるモード比較研究の特徴と課題について簡単に述べた後,欧米の研究者に対して行った聞き取り調査からいくつかの論点を示す.そうした背景の下でわれわれは次のような「モード比較調査」を実施した.すなわち,これまで日本の社会調査の標準であった PAPI (Paper and Pencil Interviewing),コンピュータ支援の他記式調査 CAPI(Computer-Assisted Personal Interviewing),自記式調査CASI (Computer-Assisted Self-Interviewing)の3つの調査モード(データ収集モード)を確率抽出標本に無作為に割り当てて,同一の調査票を用いて回答を得,比較を行った.その結果,モード間で回収率にほぼ差がなかったことからICTの導入が協力依頼の妨げとはなっていないこと,調査員の好意的な反応が得られたこと,自記式部分では項目無回答比率が高くなる可能性があることなどの知見を得た.この調査実施の経験とパラデータの分析から,ICTを活用した社会調査の今後の課題と可能性,そして調査モード研究が取り組むべき課題を述べる.

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© 2015 数理社会学会
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