理論と方法
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特集 数理社会学とシミュレーション
シミュレーションにおける学習モデルの性質
―シミュレーションの基礎理論構築へ向けて―
七條 達弘中野 康人
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1999 年 14 巻 2 号 p. 2_89-2_101

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抄録

本稿の目的は、シミュレーションにおける学習モデルの性質を整理し、既存のモデルを見直すことにある。学習モデルは時間や確率を扱うモデルであり、シミュレーション研究でしばしば使われるモデルであるが、必ずしも統一した学習ルールが存在するわけではない。学習モデルの性質としては、モデルの技術的性質(単調性、確率性、不偏性)と結果の合理的性質(固定環境における合理性、第一次確率支配環境における合理性、リスク選好つきの合理性)を検討する。Macyモデル、Erev & Rothモデルなど、集合行為や社会的ジレンマに関する既存の学習モデルを各性質に照らしあわせてみると、各モデルが異なる性質を持つことがわかる。Macyモデルの結果から、学習が社会的ジレンマの解決策の一つとしてあげられるようになったが、本稿の議論から、Macyの学習モデルは一つの特殊な学習モデルであり、任意の学習によって社会的ジレンマが解決するものではないということがわかる。このように、モデルの性質を統一した観点から比較検討することで、個別の学習モデルの特徴が明らかになる。またこれは、現実の人間行動と学習モデルの整合性を検討する際の指針となる。

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© 1999 数理社会学会
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