糖尿病
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糖尿病患者の生命予後, 死因に与える心, 脳, 下肢のマクロアンギオパチーの意義
Okamoto Diabetes Studyの結果から
紀田 康雄村田 佳子大井 二郎坂口 正芳田原 将行上古 真理鹿野 勉柏木 厚典
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2003 年 46 巻 2 号 p. 107-115

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抄録

心・脳・下肢に見られる糖尿病大血管合併症が生命予後や死因に与える影響を岡本糖尿病疫学研究に登録した1, 122例の2型糖尿病患者を対象に調べた. 非侵襲的検査法と一定の診断基準を用いて虚血性心疾患 (IHD), 脳梗塞 (CI), 閉塞性動脈硬化症 (ASO) の有無を本調査の登録時に調べた. macroangiopathyの数をMA scoreとして全身の動脈硬化の指標とした. 2001年6月時点の生命予後と死亡原因を調べた. 平均観察期間5.2年の間に1, 122例中129例の死亡が確認できた. 心血管死 (28.7%), 悪性腫瘍 (26.4%), 感染症 (11.6%) が3大死亡原因であった. Cox回帰モデルを用いて年齢や糖尿病歴で補正しても各々のmacroangiopathyは独立した予後決定因子であった. とくにIHDやASO合併例では予後が不良であった. MA scoreも心血管死亡率と密接な関係を認めた. 3つのmacroangiopathyすべてを合併していた症例では, 1,000人年あたりの死亡率はmacroangiopathyを全く合併していなかった症例の23倍高値であった. さらに, HbA1cレベルや性差の予後への関与も示唆された. macroangiopathyの合併そのものが2型糖尿病患者の予後を左右する可能性がある. 以上の結果から, 心血管死のリスクを減するためにも血糖コントロールや危険因子の制御とともに非侵襲的検査による全身のmacroangiopathyの評価が, 糖尿病初期診療において重要であることが示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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