糖尿病
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糖尿病のLCAT活性
高山 公吉永野 聖司高橋 昭三
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1986 年 29 巻 6 号 p. 491-497

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抄録

Lecithin cholestcrol acyltransferasc (LCAT) 活性を変動させる因子について検討し, 糖尿病におけるLCAT活性の変動とその機序について考察した.また, LCAT-脂質系のバランス破綻の際に出現すると考えられるlipoprotcin-X (Lp-X) の測定を利用して, 糖尿病ではLCAT-脂質系のバランスが保たれているか否かを検討した.
未治療糖尿病群では, 対照群に比し, 血中脂質濃度, LCAT活性ともに有意に上昇した.LCAT活性は総コレステロール, 中性脂肪, リン脂質と強い正の相関を示し, 一方, γ-glutamylcysteinylglycine (GSH) を加えLCAT活性を促進させた場合の促進率は逆にそれら脂質と負の相関を示した.経口的に糖を負荷した場合, LCAT活性, 活性促進率はともに影響を受けなかったが, 脂質を経静脈的に負荷した場合, LCAT活性は負荷前値に対し, 5分後では平均11.5%の上昇を示した (p<0.01).その上昇は基質となるべき外因性脂質の変動とは必ずしも平行せず, 単に基質の影響とは考えられなかった.以上より, LCAT活性は脂質の影響を強く受けることが示唆され, また, 未治療糖尿病患者ではLCAT活性は上昇し, その機序は糖よりむしろ脂質の上昇に伴った変動と考えられた.Lp-Xは糖尿病患者全例において陰性で, また, 糖, 脂質ともに少量の1回投与負荷ではLp-Xは認められず, 脂肪乳剤の比較的大量で長期投与の症例においてのみ陽性となり, 糖尿病自体ではLCAT-脂質系のバランスに大きな破綻は生じていないことが示された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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