1983 年 26 巻 5 号 p. 541-550
血糖降下作用とともに血小板機能異常を改善する作用が期待される新しい抗糖尿病薬グリクラジド (SE) の臨床治験を行う機会をとらえ, 糖尿病代謝と糖尿病性網膜症に対する影響についてProspectiveな臨床長期比較試験を実施した。前編に本試験の目的および詳しい実施方法を報告した.
本編では, 研究結果のうち糖尿病治療満足度判定を中心に, 収集した対象例のデータ集計可否の検討基準および背景因子の解析, SE, および, その他スルフォニール尿素剤 (SU) の安全性に関する検討について詳しく報告する. 対象として実施された症例は286例で, 各種の状況を検討の結果279例 (SE群84例, SU群116例, 食事療法単独群79例) がデータ解析対象となった.
背景因子の検討では, 食餌群がSE, SUの対象と異なる集団であったが, SE群とSU群はほぼ同一の母集団と判定された. 糖尿病治療満足度判定では, その評点でSE群は4.2±2.0. SU群は4.7±1.9, 食餌群は3.1土1, 8と食餌群が経口剤群に比して治療状態がよかった. また, 糖尿病治療満足度をGood, Fair, Poorの判定に直すと, SE群はGoodが47.6%, Fairを加えると67.8%, SU群はそれぞれ34.5%, 67.3%, 食餌群は70.8%, 86.0%となり, 食餌群の治療状態が有意によかった. これらのデータについて各種の層別検討を行った.
安全性検討では低血糖症状, 心電図所見, 副作用症状, 臨床検査値判定などを行った. SE群については発疹が若干多いようであったが, その他, 特に問題になる点はなかった.