2020 年 63 巻 12 号 p. 811-819
症例は74歳女性.69歳時に診断された多発肺転移および肋骨転移を伴う肺腺がんに対し,ゲフィチニブ療法,オシメルチニブ療法,カルボプラチン,ペメトレキセド,ベバシズマブ併用療法,アテゾリズマブ療法,ドセタキセル療法が実施されたが,アテゾリズマブ初回投与から23週後に糖尿病性ケトアシドーシスを契機に抗GAD抗体陽性急性発症1型糖尿病と診断された.膵島細胞抗体,抗IA-2抗体,抗インスリン抗体,抗ZnT8抗体は陰性で,HLAタイピングではDRB1*04:05,DQB1*04:01アリルの保有が確認された.抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブ投与後に発症した1型糖尿病の報告は稀であり,中でも本例は日本人1型糖尿病の疾患感受性HLAアリルであるDRB1*04:05,DQB1*04:01の保有が確認された初めての報告である.自己免疫性急性発症1型糖尿病の病態を考える上で貴重な症例と考えられる.