2010 年 53 巻 9 号 p. 695-698
症例は28歳の男性で,2008年春の健診にて尿糖陽性であったが放置していた.同年9月30日より左肩および右鼡径部痛,嘔気,熱感を認め当院を受診した.空腹時血糖値277 mg/dl,ケトーシス,高度の炎症反応を認めたため輸液,インスリン持続静注,抗生物質投与を開始した.MRI検査にて左肩~左上腕および右鼡径部筋膿瘍と診断した.重度歯肉膿瘍が原発感染巣と推察され,大臼歯を8本抜歯した.抗GAD抗体は陰性でインスリン分泌能は保たれており2型糖尿病と診断した.インスリンアナログ混合製剤1日2回注射にて血糖コントロールは良好となり,左肩~左上腕および右鼡径部筋膿瘍も縮小した.28歳の若年男性が,重度歯周病からの血行性感染と思われる上下肢化膿性筋炎を発症して2型糖尿病と診断された稀な症例と思われる.