1997 年 11 巻 4 号 p. 383-388
症例は72歳,男性.右上腹部痛と発熱を主訴に当院を受診した.腹部超音波検査では胆嚢の腫大と壁の著明な肥厚とが認められ,胆嚢に接する肝内S4領域にガスを混入した低エコー域が存在した.腹部CT検査で,肝内の病変は辺縁不整でガスを混入するほか,液体レベルの部分を含む低吸収域として描出され,急性胆嚢炎に合併した肝膿瘍と診断した.また,肝膿瘍の膿瘍腔は腫大した胆嚢内腔と連続性があり,胆嚢炎から穿通性に発症したものと考えられた.抗生剤投与のほか,経皮的胆嚢ドレナージを施行し,300mlの黄白色膿汁を排液した.ドレナージ後2週目の腹部CT検査では膿瘍腔はほほ消失し,胆嚢造影では胆嚢体部から肝内に延びる3cmの瘻孔が描出され,肝膿瘍が穿通性に発症したことが確認された.穿通性肝膿瘍を伴った胆嚢炎の報告は,本邦でこれまでわずかに7例と少なく,極めて稀な症例と考え文献的考察を加え報告した.