2012 年 26 巻 4 号 p. 559-569
要旨:胆嚢癌の予後向上には根治性と安全性を両立させた過不足のない術式の選択が必要となる.しかし適切な術式についてのエビデンスは乏しく,進展度に応じた標準術式は必ずしも確立されていない.
pT1胆嚢癌は本邦ではリンパ節転移はほとんどないとされ,胆嚢摘出術のみでも予後は良好である.胆道癌診療ガイドラインでは,胆嚢癌を強く疑う症例に対しては開腹胆嚢摘出術を推奨している.pT2胆嚢癌は適切な術式選択により予後の改善が期待される.しかし,その至適術式については現在でも明確な結論が得られていない.われわれは,S4a+S5肝切除+肝外胆管切除+D2リンパ節郭清を標準術式としてきた.pT3やpT4であれば治癒切除が最優先であり,根治性が確保されれば拡大肝右葉切除術や,膵頭十二指腸切除の付加も検討する.肝転移や腹膜播種がある場合は,非切除群との間に予後の違いを認めず外科的切除の適応はないと考える.