胆道
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「第一回 基礎編―病理の立場から」
外科解剖・病理学的視点からみた漿膜下層浸潤pT2 (ss) 胆嚢癌診療の問題点
木村 理平井 一郎渡邊 利広
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2008 年 22 巻 2 号 p. 217-225

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抄録

胆嚢には, 粘膜筋板が存在せず筋層が薄く粗であること, Rokitansky-Aschoff sinusが存在すること, 肝に接していること, 胆嚢頚部から三管合流部は胆管, 肝動脈, 門脈などの肝門部組織と同じ腹膜に囲まれた空間の中に存在すること, 胆嚢から直接大動脈周囲リンパ節に至るリンパ管が存在することなど, さまざまな外科病理・解剖学的特徴が存在する. このことが胆嚢に発生した進行癌の進展様式を特徴付け, 局所の完全切除を困難なものにしている. とくに漿膜下層浸潤pT2 (ss) 胆嚢癌の進展と病態はその至適手術の観点から重要なものである. 漿膜下層浸潤pT2 (ss) 胆嚢癌に対しては肝臓を部分切除し, 肝十二指腸間膜, 総肝動脈周囲, 膵後面までのリンパ節郭清が必要と考えられている. しかし肝切除範囲は肝床部だけでいいか, あるいはS4a, S5切除が必要か, 予防的胆管切除は必要かなどについては議論のあるところである. 剖検例の詳細な検索では腫瘍が小さく漿膜下層ss浸潤部の深さが浅く, INFα, INFβの浸潤増殖様式を呈し癌の浸潤量がわずかなものでは肝十二指腸間膜浸潤やリンパ節転移は認められなかった. 粘膜筋板を持たない胆嚢癌は比較的容易に漿膜下層への進展をきたす性格を持っているが, 漿膜下層への浸潤が直ちに胆嚢外への癌進展につながらない可能性もある. 漿膜下層浸潤pT2 (ss) 胆嚢癌の診断と治療にはさまざまな問題点がみられ, 発生部位や浸潤量などさまざまな角度からの分析が必要である.

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© 2008 日本胆道学会
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