腸内細菌学雑誌
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総説
粘膜免疫と共生細菌
小幡 高士清野 宏
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2007 年 21 巻 4 号 p. 277-287

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抄録

哺乳動物の体内で,外界との接点が最大の部位は粘膜である.ヒトの粘膜の表面積は口腔,鼻腔,消化器,呼吸器,泌尿・生殖器含めて実に400 m2(テニスコート約1.5面分)にも及び皮膚表面積のなんと200倍以上である.これら粘膜には非常に多くの共生細菌が常在しており,宿主側の成長や疾病の発症等に密接に関わるだけでなく,宿主側も巧妙かつ柔軟な“粘膜免疫システム”を備えることで非自己である共生細菌に対して偽自己化を確立し共生細菌を質・量ともに制御している.本稿では,粘膜防御における重要液性分子である分泌型IgA抗体の産生誘導機構および上皮細胞間リンパ球,経口免疫寛容といった粘膜免疫システム特有の細胞群,免疫機構について概説するとともに,共生細菌と宿主粘膜免疫系の共生的相互作用に関する最新の知見についても紹介する.この粘膜免疫学と共生細菌学の境界領域研究は,近年ようやく萌芽期を迎えたところであり今後の本格的進展が待たれる.

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© 2007 (公財)日本ビフィズス菌センター
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