発達心理学研究
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育児期女性の就労継続・退職を規定する要因
小坂 千秋柏木 恵子
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2007 年 18 巻 1 号 p. 45-54

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抄録

本稿は,育児期の夫婦1,062組を対象に,妻が就労を継続あるいは中断・断念した理由を明らかにし,その様態が夫婦の学歴・居住状況にどう関係しているか,またどの要因が就労継続・退職に影響をもたらしているのかについて検討した。主な結果は次の通りである。(1)就労継続・退職の理由として,「家庭優先」「やりがいのある仕事」「自立志向」「夫や夫の親からの就労反対」「夫の家事育児サポート」「自分の親や周囲からの育児サポート」の6要因が明らかにされた。(2)就労継続・退職の理由得点を夫婦の学歴により比較した結果,夫婦とも大学卒のほうが夫婦とも高校卒よりも妻の「家庭優先」や「夫や夫の親からの就労反対」が低く,「夫の家事育児サポート」が高いことが明らかにされた。また,居住状況による分析の結果,親と同居している女性に「やりがいのある仕事」が高く,夫の親と同居あるいは近居の場合に「夫や夫の親からの就労反対」が高いことが見出された。(3)就労継続・退職の理由が退職経験の有無に及ぼす影響を検討したところ,「夫や夫の親からの就労反対」が顕著な影響を及ぼしていることが明らかにされ,家族の要因が女性のライフコースを左右することが明らかにされた。

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© 2007 一般社団法人 日本発達心理学会
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