国際保健医療
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Print ISSN : 0917-6543
原著
外国人妊産婦とのコミュニケーションにおける助産師の経験
佐藤 沙紀杉本 敬子
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2022 年 37 巻 1 号 p. 11-24

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抄録

目的

  日本語を母語としない外国人妊産婦とのコミュニケーションにおける助産師の経験を経時的に記述することにより、妊娠期から産褥期特有の課題について明らかにすること。

方法

  外国人妊産婦に対するケアの経験のある臨床助産師5名を対象に、質的記述的研究を行った。

結果

  妊娠期においては«妊娠期に医療的な説明を行う時には正確な情報伝達を行いたい»«妊娠期の保健指導時では指導内容によって必要な手段が異なる»«妊婦健診の診察での行動の促しは言語的手段があると関わりやすい»«分娩開始兆候についての電話連絡では言語的コミュニケーションがとれないと困難感がある»の4つのカテゴリー、分娩期においては«適切な手段やそれまでの産婦への継続的な関わりによって分娩進行中のやり取りが円滑になる»«分娩期のケアを行う際には非言語的手段が有用である»«母児の生命に危険が及んでいる時は産婦の理解力や適切な伝達手段の選択がコミュニケーションに重要である»«分娩直後の処置の際に痛みの表現が大きいと言語の違いがある中での関わりに難しさを感じる»«分娩直後は言語的に意思疎通ができないと関わりの難しさを感じる場面がある»の5つのカテゴリー、産褥期においては«産褥期の保健指導では非言語的手段で行うことができる場面がある»«産褥期に医療的な説明をする際は言語的手段があれば困らない»«産褥期における電話連絡では自身の言語能力で対応する必要があり意思疎通が難しい»«産褥健診では言語的な意思疎通ができないことで十分な関わりができない無力感に繋がる»の4つのカテゴリー、妊娠期から産褥期全体の関わりとして«言葉や文化の違いがある中でもより質の高いコミュニケーションを行いたい»という1つのカテゴリーが抽出された。

結論

  妊娠期・分娩期・産褥期のそれぞれの場面において、医療通訳などの正確な情報伝達が可能な言語的手段を用いてコミュニケーションがとれるような環境整備や、文化を尊重するケアの実現や助産師と外国人妊産婦とのより良い信頼関係の構築のための助産師の異文化対応能力の向上に向けた教育を行う必要性が示唆された。

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© 2022 日本国際保健医療学会
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