この研究は、卵巣摘出した雌マウスに皮膚創傷を作製し、経口投与したイソフラボンの一種であるダイゼインが、創傷治癒にどのような影響を与えるかを観察したものである。8週齢の雌マウスを卵巣摘出群と卵巣摘出し創作製した後にダイゼインを与えた2群に分けた。両群共、卵巣摘出後、ダイゼインを含まない精製飼料で2週間飼育後に、左右の背部に直径4 mmの皮膚全層欠損創を作製した。創作製後、ダイゼインを含まない飼料とダイゼインを含む飼料で2週間飼育した。ダイゼインは、飼料1 gに0.01 mg含むように作製した。両群の創面積は、2週間の間の観察期間全てにおいて、有意差は見られなかった。しかし、炎症期である創作製後4と5日では、ダイゼイン食で飼育した群が無ダイゼイン食で飼育した群が、より創面積が小さい傾向がみられた。創作製後の3日での、再上皮化の割合は、ダイゼイン群で40.7 ± 17.6%、無ダイゼイン群で21.0 ± 16.8%となり、ダイゼイン群はより上皮化が進んでいる傾向が見られた。これらの結果は、エストロゲン欠乏状態で、ダイゼインの経口投与が、創傷治癒において炎症を抑制し、上皮化を促進することを示唆している。