日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
移動性精巣60例の検討
大谷 俊樹岡本 健太郎薄井 佳子井上 裕美岡嶋 千怜有井 滋樹
著者情報
キーワード: 移動性精巣, 精巣固定術
ジャーナル フリー

2007 年 43 巻 5 号 p. 667-671

詳細
抄録

【目的】移動性精巣に対する精巣固定術の是非について検討を加えた.【方法】2000年4月より2006年6月までに当科外来を受診した60例の移動性精巣症例と37例の停留精巣症例を対象とした.外来,手術数の年次推移,手術時期,経過観察中の変化について検討した.【結果】移動性精巣の外来数(手術数)は2000年O(O),2001年4(0),2002年5(2),2003年10(6),2004年15(6),2005年11(5),2006年15(6)と年次的増加傾向を認めた.初診時の年齢は2か月から9.9歳(平均2.8歳)で,術時平均年齢は3.0±2.2歳であった.これに対し,停留精巣では外来数(手術数)は2000年1(O),2001年6(4),2002年6(7),2003年8(7),2004年6(1),2005年8(7),2006年2(1)と年次的増加を認めなかった.初診時の年齢は17日から13.4歳(平均2.9歳)で,術時平均年齢は2.4±3.1歳であった.経過観察中に1例の移動性精巣症例(3歳)で精巣の左右差を生じ,精巣固定術を行った.8歳の移動性精巣症例に対し,精巣固定術を行った際に精巣生検を行い,病理学的に組織の一部に間質の線維化の進行と精細管の変性を認めた.【結論】移動性精巣を主訴に来院する症例が増加していた.移動性精巣は基本的に経過観察されることが多いが,精巣に停留精巣と類似した組織学的変化を来す症例が存在し,精巣固定術の是非について更なる検討が必要である.

著者関連情報
© 2007 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top