日本小児外科学会雑誌
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輪状膵による先天性十二指腸狭窄術後の慢性膵炎の1例
漆原 直人森村 敏哉小倉 薫宮崎 栄治福本 弘二福澤 宏明木村 朱里長谷川 史郎
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2006 年 42 巻 4 号 p. 525-530

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抄録

輪状膵は,慢性膵炎の原因となるが小児では稀である.今回,輪状膵による十二指腸狭窄術後の慢性膵炎を経験した.稀な膵・胆管走行を示し興味ある症例と思われるので報告する.症例は6歳の男児.生後3日に十二指腸狭窄・輪状膵にて十二指腸十二指腸吻合を施行.1歳より腹痛・嘔吐を繰り返すようになり3歳より膵炎と診断され経過がみられていたが,発作が頻回となった.膵臓は全体的に萎縮し膵管の著明な拡張と内部に多数の膵石を認めたが,胆管の拡張はなくまた合流異常は認めなかった.主膵管は,胆管開口部である主乳頭との交通がなく,副乳頭にのみ開口し副乳頭近くでの膵管狭窄と体尾部の膵管の不整な拡張と膵石を認めた.以上より副乳頭からの膵液の排泄障害が慢性膵炎・膵石の原因と考えられた.手術は膵管を広く開放し内部に充満した膵石を除去した後に,Frey手術に準じて膵頭部局所切除・膵管空腸側々吻合と副乳頭形成,胆摘術を施行した.自験例では主乳頭と膵管の交通はなく,副乳頭のみに膵管が開口しており,腹側膵原基の形成不全と,背側膵原基の過剰発育あるいは十二指腸の過剰回転が輪状膵の原因と考えられた.

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