感染症学雑誌
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委員会報告
ゲンタマイシン硫酸塩注射液の使用状況に関する アンケート調査結果
大西 健児三鴨 廣繁
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2013 年 87 巻 3 号 p. 357-367

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抄録

Gentamicin Sulfate 注射液 (注射用 GM と略す) は,国内での承認用量が海外と大きく異なり,海外よりかなり少ないことから,医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に対して用法・用量の変更が要望され,国内でも高用量の開発が開始された.そこで,注射用 GM の使用実態を把握すべく,日本感染症学会認定の感染症専門医並びに日本化学療法学会認定の抗菌化学療法認定医・指導医を対象に注射用 GM の使用状況に関するアンケート調査を実施した. 有効回答は 38.0%(719/1,891 名) から得られ,2011 年の 1 年間に注射用 GM を使用した医師は約 30% であった.成人での主な投与対象疾患は敗血症及び感染性心内膜炎で,菌種は緑膿菌,ブドウ球菌属,腸球菌及びレンサ球菌属が多く,国内未承認の疾患や菌種に対しても一部で注射用 GM が使用されていた.投与経路は主に点滴静注で,投与回数は国内未承認の 1 日 1 回が多かった.用法・用量については,国内承認用量の上限以下の固定用量 (120mg/day 以下) で投与した医師もいたが,海外での一般的な承認用量である 3~5mg/kg/day で投与した医師が最も多かった.TDM を実施した医師は実施しなかった医師より多く, 1 日 2~3 回投与時の目標血中濃度は,トラフ濃度はほとんどが 2μg/mL 以下,ピーク濃度は 4~10μg/mL の範囲内が多かった.注射用 GM は特に敗血症及び感染性心内膜炎で他の注射用抗菌薬と併用されており,敗血症ではペニシリン系及びカルバペネム系,感染性心内膜炎ではペニシリン系との併用が多かった.特に注意した副作用は,腎機能障害と回答した医師が最も多かった. 本調査により,国内既承認の用法・用量で注射用 GM を使用している医師だけでなく,海外の承認用量と同様の高用量を使用している医師が多数いるという実態が明らかとなった.医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に寄せられた要望を裏付ける使用実態が確認されたことから,わが国においても海外と同様の用量が早期に承認されることが望まれる.

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© 2013 社団法人 日本感染症学会
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