2003 年 11 巻 3 号 p. 29-39
近年,景気の低迷とアジア諸国の台頭を背景に産業空洞化が議論されている.中部地域でも円高が進んだ1985年以降,中部地域企業における海外現地法人の設立が増加している.こうした企業の生産拠点のシフトは,企業の競争力を強化する一方で,域内の雇用の減少をもたらす.さらに,関連産業の縮小により技術面での空洞化も発生する.この意味で産業空洞化の影響を推計することは重要である. 本稿では生産拠点を海外にシフトする産業を外生化し,その海外生産シフトの大きさだけ域内生産を減らすことにより,他産業への波及と雇用への影響を求める.この方法は,従来の輸出代替効果を推計する方法より直接的であり,具体的なプロジェクトの影響を評価する場合等に高い実用性を有する.