2021 年 61 巻 3 号 p. 177-183
背景.Granulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)産生腫瘍は,時に非常に強い炎症反応を示し白血球増多を伴う.その臨床経過は急速で予後は不良とされる.症例.55歳の女性.健康診断で胸部異常陰影を指摘された.胸部CTで右肺上葉に胸壁浸潤を伴う5 cm大の腫瘍を認め,白血球増多を伴っていた.右上葉原発性肺癌と考え,右上葉切除,胸壁合併切除,リンパ節郭清を施行した.病理組織学的にG-CSF産生肺多形癌(pT3bN0M0,Stage IIB)と診断した.肺切除後2カ月間,白血球数は軽度高値が遷延していた.その後,白血球数が再上昇したため,胸腹部CTを施行し小腸に新出の壁肥厚を認めた.切除したところ小腸転移であり,白血球数は正常化した.術後にカルボプラチン,パクリタキセル,ベバシズマブを4コース施行した後,ベバシズマブで維持療法を行った.以後50コース施行して,5年間無再発で経過している.結論.G-CSF産生腫瘍は予後不良とされるが,外科的切除後にベバシズマブ併用・維持療法を行い,良好な予後を得た症例を経験した.