日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
Print ISSN : 0911-1794
ISSN-L : 0911-1794
症例報告
リードレスペースメーカ植込み術を施行した小児の1例
佐藤 要 小島 敏弥大森 紹玄小川 陽介田中 優白神 一博益田 瞳浦田 晋松井 彦郎柴田 深雪平田 康隆小野 稔加藤 元博犬塚 亮
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 38 巻 1 号 p. 63-69

詳細
抄録

リードレスペースメーカ(LPM)の小児への植込みは稀であり,本邦では未だ報告がない.われわれは複数の条件を勘案し,LPM植込み術を施行した小児例を経験した.症例は拡張型心筋症に対する心臓移植後の12歳女児で,拒絶反応により循環不全を伴う一過性の洞不全症候群を発症し,ペースメーカ(PM)治療の適応と判断した.両側鎖骨下静脈の閉塞,成長過程であること,手技の侵襲性,免疫抑制剤投与下におけるデバイス感染のリスク等のため経静脈的PMや心外膜PMを選択しにくい状況であった.一方で,心臓再移植の可能性と一過性徐脈であることから,LPMの懸念点である電池消耗に伴う追加留置の必要性と,モードがVVIに限られる点は許容されると判断した.体格が小さいことによる血管アクセスの問題も,大腿静脈シースを段階的にサイズアップすることでLPMイントロデューサシースを留置することで解決しえた.心臓が小さいため三尖弁から右室中隔留置部位までの距離が取れず,また高い刺激閾値が問題となったが,右室中位中隔に許容範囲内である部位を確認し,留置しえた.植込み術中・術後に有害事象はなく,心拍数低下時にLPMは正常に作動した.その後,経カテーテル的心筋生検に際し,問題はなかった.適応が限定的であることに留意し,適切な症例を選択すれば,小児例へのLPM植込みは安全かつ有用な治療選択肢になりうる.

著者関連情報
© 2022 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top