Journal of UOEH
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医療的ケア児の保護者における就労状況の調査
荒木 俊介 中村 加奈子柏原 やすみ江口 尚下野 昌幸
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2019 年 41 巻 2 号 p. 171-178

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抄録

日常的に医療的ケアが必要な小児(医療的ケア児)は増加傾向で,平成27年度には約1万7,000人と推定されている.医療的ケア児の主たる介護者は保護者であり,特に母親にかかる負担は大きく,母親が希望に沿って就労することは困難なことが多い.本研究では医療的ケア児の保護者(主に母親)の就労状況調査を通して,就労状況・経済的基盤の改善に必要な効果的支援策を検討することを目的とした.産業医科大学病院小児科に通院中または北九州市内の障害児通所施設に通所している医療的ケア児の保護者を対象とし,独自に作成した無記名の自記式調査用紙を用いた.75世帯の保護者(73世帯が母親)から回答を得た.医療的ケア児の中央値は9歳で,全員が療育手帳を取得していた.母親(年齢の中央値40歳)が現在,就労していたのは32世帯(42.7%)であり,そのうち22名(68.8%)は非正規雇用で,22名の母親は子どもの障がいを契機とした転職・離職を経験していた.母親の就労状況と児の年齢,同居家族数,世帯収入との間には有意な関連性を認めなかった.現在の就労の有無にかかわらず64名(88.9%)の母親は経済的な理由,または自分自身のやりがいのため就労を希望している一方,就労を希望しない母親も8名(11.1%)いた.今回の調査における医療的ケア児の母親の就労率は一般女性より低く,非正規雇用が多かった.希望の多様性にも配慮し,経済的および精神的側面から母親の就労を支援する必要がある.

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© 2019 産業医科大学
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