脳神経外科ジャーナル
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パーキンソン病に対する視床下核刺激療法の現状と将来
片山 容一大島 秀規
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2002 年 11 巻 5 号 p. 333-338

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抄録

パーキンソン病(PD)に対するL-ドーパを中心とした薬物療法の限界を克服する新しい外科的治療として,視床下核(STN)の脳深部刺激療法(STN-DBS)が注目を集めている.STN-DBSは,off-medicationの状態で,振戦,筋固縮,寡動,歩行障害および姿勢の不安定性に効果を示し,日常活動と運動機能を総合的に改善する.on-medicationの状態でも,off-periodの症候を改善しon-periodの時間を延長することによって,motor fluctuationを改善する.また,L-ドーパの投与量を減量させ,ドーパ誘発性ジスキネジア(dopa induced dyskinesia;DID)を解消する.現在のところSTN-DBSの適応は,L-ドーパ反応性の認められるPDのなかで,(1)on-off現象による著明なmotor fluctuationを示す症例,(2)DIDのために薬物療法に制限のある症例,(3)それ以外の副作用のために薬物療法に制限のある症例,であると考えることができる.その一方で,L-ドーパ反応性の乏しくなった進行例においては,その効果に限界があると考えるべきである.L-ドーパを中心にした薬物療法を長期に続けることが,on-off現象やDIDあるいは種々の精神症状が現れる原因になっている可能性が指摘されている.STN-DBSを早期に選択すれば,L-ドーパの投与量を最小限に止めることができる.これによって,PDの症候の推移にどのような影響を与えることができるかを検討することが今後の課題である.

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© 2002 日本脳神経外科コングレス
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