地理学論集
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北海道における薬用作物栽培の特徴
石田 奈菜
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2018 年 93 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

漢方薬の国内需要が高まるなか,原料の生薬は約8 割を中国産に頼っている。しかし,中国産生薬の価格は毎年上昇しているため,国内自給率を上げることが求められている。特に北海道は大規模栽培が可能なこと,寒冷地向きの作物を栽培できることから注目されている。薬用作物は連作障害が多いこと,栽培方法が確立されていないこと,登録農薬が少ないこと,生薬への加工が必要なこと,市場がなく製薬会社との契約栽培になることなど,他の作物と異なる点が多い。本研究では,北海道における薬用作物栽培の実態を,帯広市のセンキュウ栽培,千歳市のトリカブト栽培,石狩市のソヨウ栽培,夕張市の夕張ツムラの工場,名寄市のカノコソウ栽培の事例から報告する。その際,栽培規模や輪作の状態,薬用作物栽培の課題や利点などに注目した。各生産地で共通して,自然条件などに適した薬用作物の選定や生産者の生産力,販路の確保,輪作体系に組み込めるかなどが重要であることがわかった。

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© 2018 北海道地理学会
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