日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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特別報告
新たな難病患者支援制度について
山﨑 理
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2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 42

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抄録

 平成26年5月30日公布・同27年1月1日施行の「難病の患者に対する医療等に関する法律」は, 難病患者の「良質かつ適切な医療の確保」及び「療養生活の質の維持向上」を目的とし,基本 方針の策定,公平かつ安定的な医療費助成制度の確立,調査研究の推進,療養生活環境整備事業 (難病相談支援センター等)の実施等が規定されている.  法律に基づき国が定める「基本方針」においては,難病の患者に対する医療等の推進の基本的な 方向や,医療を提供する体制の確保,医療に関する人材の養成,患者の療養生活の環境整備,福祉 サービスや就労の支援等関連施策との連携などが盛り込まれることとなっており,各種施策の 更なる充実が期待される.  また,法定化された医療費助成の費用に消費税の収入を充てることができるようになり,制度の 安定が図られている.対象疾病数も,従来の特定疾患治療研究事業の56から約300の「指定難病」 へと大幅に拡大され,うち既存疾病と一部の新規疾病に対して平成27年1月より先行的に適用 される.「指定難病」患者の認定は,専門的な知見を有する医師として指定される「難病指定医」 が作成する診断書に基づき,都道府県が行う.  概観すると,難病対策はこれまで「施策の谷間」であった.全国的には,昭和47年の「難病対策 要綱」の策定以来約40年にわたり予算事業として行われてきた特定疾患治療研究事業が,医療費 助成対象となる疾病が限られ患者の間に不公平感があることや,医療費助成等における都道府県の 超過負担が続いていること等,様々な課題が指摘されてきたところであり,このたび,法律に 基づく制度として,措置が講じられることとなった意義は大きい.  一方,公衆衛生としての保健医療行政施策は,どうしても疾病頻度の高いものが優先されやすい 傾向にある.しかし,難病患者本人及び家族が多大な苦しみを持ちながら,長期間の療養生活を 送っている状況にある中,本県においては,たとえ疾病頻度としては小さいものであっても,より 力を入れ,こうした方々を支援する必要があるとの考え方に立ち,全国に先駆け,様々な取組を 県独自に行ってきた経緯がある.  法律の基本理念には,「難病の患者の社会参加の機会が確保され,地域社会において尊厳を保持 しつつ他の人々と共生することを妨げられないこと」と謳われており,その実現に向け,まずは 当面の制度改正を円滑に乗り切ることが求められる.  抄録作成段階(8月)においては,国の指定難病検討委員会で「指定難病」の選定とその診断 基準等が議論されている段階であり,制度の運用等の詳細は示されていない状況である.平成27年 1月の新制度の施行まで準備期間が限られる中,患者や医療機関への周知,「難病指定医」の確保等, 様々な側面から,関係各位の御理解・御協力をよろしくお願い申し上げたい.

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© 2014 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
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