日本鼻科学会会誌
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原著
上下気道炎を呈しコルヒチンが著効したMAGIC症候群を疑う症例
山本 雅司川島 佳代子奥野 未佳猪原 秀典
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2020 年 59 巻 4 号 p. 406-414

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抄録

症例は60歳男性。初診の1ヶ月前から感冒症状があり,鼻閉症状・皮疹・口内炎が出現し増悪を認め,疼痛で食事摂取困難となったことから精査加療目的に近医耳鼻咽喉科より当科へ紹介となった。初診時に発熱は認めなかったが,血液検査にて炎症反応高値であった。主訴は鼻閉による呼吸苦,嗅覚障害,味覚障害,口内炎であった。鼻内所見において,下鼻甲介・鼻中隔粘膜の広範囲にわたる出血性びらんと膿性鼻汁を認めた。また基準嗅覚検査にて嗅覚閾値はスケールアウトであった。口腔内所見においては軟口蓋や口唇に出血性びらんが散見された。皮膚所見においては体幹・四肢に紅暈を伴う嚢胞が多発していた。精査加療目的に入院とし,各種検査を行った後にコルヒチン1 mg/day投与を開始したところ鼻粘膜炎・口腔粘膜炎は速やかに改善し,血液検査にて炎症反応も低下した。一方で経過中に咳嗽と気管内結節所見が出現し,増悪を認め,コルヒチン投与にても改善なく,胸部CTを施行したところ入院時には見られなかった気管壁肥厚所見を認めた。コルヒチンを1.5 mg/dayに増量したところ気管内結節所見・気管壁肥厚所見は共に改善を認めた。確定診断には至らなかったが,臨床所見と各種検査結果から再発性多発軟骨炎とベーチェット病を合併するMAGIC症候群が強く疑われた。本症例について文献的考察を加え報告する。

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