日本顎口腔機能学会雑誌
Online ISSN : 1883-986X
Print ISSN : 1340-9085
ISSN-L : 1340-9085
原著論文
食品のテクスチャーが顎・舌筋活動に与える影響の筋電図学的検討
勝美 奈央塙 総司野口 由里香佐々木 啓一
著者情報
キーワード: 咀嚼, 嚥下, 食感, 筋電図
ジャーナル フリー

2017 年 23 巻 2 号 p. 96-106

詳細
抄録

 おいしさには,ヒトに関わる要素,食品に関わる要素,食事空間に関わる要素など様々な要素が影響を及ぼしている.食品に関わる要素は,味,匂い,色,温度,テクスチャーにより構成されており,特に食品テクスチャーはおいしさに関わる重要な要素の1つである.
 本研究では,任意に“ぼそぼそ感”を設定できるモデルゲルを用いて,咀嚼,嚥下時の咬筋,舌骨上筋群の筋活動を導出し,食品のテクスチャーの一つであるぼそぼそ感が顎・舌筋活動へ及ぼす影響の検討を目的とした.
 設定したぼそぼそ感の強さは,官能評価の結果から飲み込みにくさに関連していた.咀嚼回数,咀嚼時間,咀嚼周期には,一定の変化傾向は認められず,ぼそぼそ感の強度にかかわらずほぼ一定の値を示した.咀嚼時のすべての筋電図パラメータにおいて,ぼそぼそ感の強度変化に伴う有意な差は認められなかった.嚥下時では,ぼそぼそ感の強度にかかわらず,咬筋と舌骨上筋群の筋活動開始時に一定の変化は認められなかった.一方で,筋活動終了時はぼそぼそ感の増加に伴い遅延する傾向が認められた.咬筋および舌骨上筋群の筋活動量については,ぼそぼそ感の増加に伴う有意な変化は認められなかった.筋活動開始時から筋活動終了時までの筋活動時間は,ぼそぼそ感の強度に関わらず咬筋の筋活動時間に一定の変化は認められなかった.一方,舌骨上筋群の筋活動時間では,ぼそぼそ感の増加に伴い増加し,有意な差が認められた.
 本研究において,水産練り製品におけるぼそぼそ感の強さは,官能評価から飲み込みにくさに関連しており,さらに筋電図学的評価から嚥下時の舌骨上筋群の筋活動時間に影響を及ぼすことが明らかとなった.

著者関連情報
© 2017 日本顎口腔機能学会
前の記事 次の記事
feedback
Top