2002 年 29 巻 2 号 p. 168-170
【要旨】左主冠状動脈(#5-99%狭窄)の患者にLMTパッチ拡大手術を行い,術後の重症不整脈に対し,PCPSを行い救命し得た。体外循環は通常どおり,手術は上行大動脈を横切開,左冠動脈口に延長し,大伏在静脈にてパッチ拡大術を行った。体外循環離脱は容易だったが,閉胸操作中にST上昇,VTからvf状態を繰り返し,IABPでの補助下でもVT発作が繰り返されたためPCPSを施行した。PCPSでの補助後はVT,vfの重症不整脈は散発したのみで血行動態も安定し,ICU帰室となり,71時間後にはPCPSを離脱した。不整脈の発作要因に関して,血液ガスやバイパス流量など異常はなく,不整脈の発生状況からLMTパッチ拡大部が閉胸により圧迫閉塞し,不整脈が発生したのではないかと考えられた。PCPS下で心臓の容量負荷が軽減され,LMTパッチ拡大部の圧迫の改善が図られたと推測される。不整脈発生時には迅速に体外循環や補助循環へ対応可能なサポート体制も重要と考えられる。