体外循環技術
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アルガトロバンを抗凝固剤として使用した開心術の1症例
関谷 理山口 克司染井 綾子山中 郁男舟木 成樹
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1999 年 26 巻 2 号 p. 112-115

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抄録

出血性脳梗塞の既往がある開心術症例(僧帽弁置換術)に,アルガトロバン(選択的抗トロンビン剤)を体外循環中の抗凝固剤として使用した。ACTは200~250秒を目標とし,ヘパリンを少量併用したアルガトロバン持続静脈投与で行った。血栓などの安全性を考慮しヘパリンコーティングされた人工肺・回路・リザーバ・カニューレを用いた。ACTは,投与量の増減なしにコントロールでき,術中出血で苦慮することなく術後出血も少なかった。体外循環後の回路・人工肺を観察した結果,肉眼的には血栓は認められなかった。アルガトロバンは,今までPCPS・ECMOなどの補助循環(閉鎖型回路)で使用し,抗凝固剤の使用量,血小板保護,出血傾向の抑制が行えた臨床経験から,今回の開心術で使用した結果,特に問題なく体外循環を行うことができた。ヘパリンの欠点である出血傾向を助長させたくない場合に,アルガトロバンが開心術における抗凝固剤の選択肢の一つになる可能性が示唆された。

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© 日本体外循環技術医学会
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