2015 年 106 巻 4 号 p. 269-273
症例は81歳,女性.2011年,近医でTURBTを施行.膀胱小細胞癌とG3,T1以上と診断され,集学的治療目的で当院紹介されることとなったが,来院されずに放置され,1年後に排尿時痛を認め,当院を受診された.初診時の膀胱鏡では膀胱頂部に筋層浸潤する2cm大の腫瘍を認め,CT上1.2cm大の閉鎖リンパ節の腫脹を認めた.再度,TURBTを施行したところ病理組織学的診断は,T3N2M0の膀胱神経内分泌癌(小細胞癌)と診断された.なお,当院のTURBTの標本では尿路上皮癌の成分は含まれていなかった.81歳と高齢で,これ以上の入院加療は受けたくないとの強い希望があったため,テガフール・ウラシル配合剤(UFT)100mg/日の内服のみを開始した.しかし,1カ月後,小細胞癌の腫瘍マーカーである血中NSE(Neuron-specific enolase)値は27.6ng/mlと上昇し,閉鎖リンパ節も1.9cm大に拡大した.UFTを200mg/日に増量したところ,血中NSE値は改善し15.5ng/mlに低下し,閉鎖リンパ節も縮小しPRとなった.2年半以上経過した現在,検尿所見は正常であり,MRIと膀胱鏡検査上,膀胱腫瘍の再発なく経過中である.進行膀胱小細胞癌にUFTの内服が著効した1例を経験したので報告する.