環境技術
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下水汚染濃縮技術の展望
川島 普
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1984 年 13 巻 8 号 p. 583-590

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抄録

下水処理施設において, 汚泥を濃縮する目的はその含水率を減少させることによって, 汚泥の流動性は保ったままでその体積を大幅に減少させることである.
汚泥の濃縮は汚泥処理過程のまず最初の基本操作であって, 処理過程で汚泥を嫌気性消化する場合は, 消化タンクの所要容量を節減できるので加温設備や運転費の節減となり, 生汚泥を直接脱水する場合でも汚泥調整用の凝集剤の添加量を節約できる.
その方法には, (1) 重力沈降濃縮による汚泥濃縮タンクを用いる方法, (2) 浮上分離法を利用した汚泥浮上濃縮タンクによる方法, (3) 遠心濃縮機による方法などがある.
従来は大体12時間程度の自然沈降濃縮で含水率が95%位になるといわれ, そのように濃縮タンクは設計されてきたが, 最近は含水率が98%位にしかならなくその原因として食生活が変化し汚泥中の有機物が年々増加してきたため沈降性がわるくなったといわれている.そこで別の方法として浮上分離法や遠心濃縮法が考えられてきた.
汚泥濃縮タンクは高含水率の最初沈澱池の生汚泥や最終沈降池からの余剰汚泥を, 嫌気性消化や機械的脱水に先立つて計画汚泥量の12時間程度滞留させて汚泥を濃縮させるもので, その際生ずる分離液は流入管または最初沈澱池に返送して生下水と共に浄化する.
重力濃縮法の長所は, その単純性にあるが, ある場合にはその濃縮効果があがらず他の濃縮法でえられる程度の濃縮率がえられないことが多い.普通, 1次処理の生汚泥は濃縮し易いが, 2次処理汚泥は濃縮性が劣り, 別個に外部的濃縮を行なう必要があるといわれている.
浮上分離法は液相から固相あるいは液体粒子を分離するための単位操作である.分離は気泡を液相に導入して行われる.気泡は固形物に付着し, その浮力が十分に大きいと粒子は水面に浮上する.沈殿濃縮にくらべて浮上分離法の利点は, 沈降速度の小さい微細粒子または比重の小さい粒子が効率よく短時間で除去できることである.水面に浮上した粒子はスキマーで収集分離される.
現在, 都市下水処理に適用されているものでは浮上気体として空気を用いるものに限られており, 気泡は次の方法で導入される. (1) 大気圧下のばつ気 (空気浮上分離) , (2) 加圧された液体に空気を導入し, ひきつづいて大気圧に減圧する (溶解空気浮上分離) , (3) 大気圧下で空気を飽和させつぎに真空にする (真空浮上分離) .これらのシステムにおいて除去率を高めるため種々の薬剤を添加する.
汚泥浮上濃縮タンクには一般に加圧法が採用され, タンクの滞留時間は気泡と粒子の付着物の上昇時間とタンクの水深により決定されるが, 上昇速度は汚泥の性質, 気一固比 (A/S) によって変化するので, 実験的にこの値を求め一般に, A/Sは0.01~0.03g/gの範囲とし, 上昇速度は0.02~0.04m/分程度がよいといわれている.重力濃縮法とくらべて濃縮率が高く, 建設費が安いので余剰汚泥の濃縮に使われるようになった.
浮上濃縮法の因子として, (1) 圧力, (2) 循環率, (3) 流入汚泥濃度, (4) 滞留時間, (5) 気―固比, (6) 汚泥の性質, (7) 固形物負荷と水面積負荷, (8) 助剤の使用があげられている.
遠心分離機は元来, 汚泥脱水に用いられて発展してきたが, とくに加圧濾過機を汚泥脱水に使用する場合に供給汚泥濃度が支配的要因となるのに重力濃縮では汚泥濃度が希薄でありまたそのスペースもいるので最近デイスクノズル型の遠心分離機が活性汚泥の濃縮に用いられてきた.また最近の高分子凝集剤の発展と相俟って益々その適用範囲を広めつつある趨勢にある.その他, 最近, 濾過濃縮装置が開発されている.タンクに濾過板と濾布からなる濾室がセットされており, 全自動運転方式で, 3~4時間の濾過時間で浄水汚泥を固形物濃度10%に濃縮したという省エネルギー型であり注目される.また, シーブドラム濃縮装置は円筒枠の外周に濾布をとりつけ内部に下水汚泥に極少量 (固形物比で0.4%) の高分子凝集剤を添加して凝集汚泥として投入し, 低速回転しながら4.5~6.0%まで濃縮するものである.

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