日本養豚学会誌
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原著
高タンパク質含量でリジン/タンパク質比が低い飼料の給与がデュロック種肥育豚の生産性,肉質,官能特性に及ぼす影響
前田 恵助齊藤 智美楠川 翔悟齋藤 薫入江 正和
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2019 年 56 巻 2 号 p. 33-48

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抄録

モチ菓子粉などの食品製造副産物を主とする高タンパク質でリジン/粗タンパク質(Lys/CP)比の低いアミノ酸バランス法を適用したエコフィードをデュロック種肥育豚に給与し,豚の発育性,枝肉形質,肉質,筋肉内脂肪細胞の直径と面積,官能特性について調べた。約4か月齢の子豚14頭を性および体重を考慮し7頭(雌4頭,去勢雄3頭)ずつ次の2群に振り分けた。一群は市販配合飼料(CP15.4%,Lys/CP比0.045)を給与した対照区とし,もう一群は高タンパク質でLys/CP比の低い飼料(CP17.0%,Lys/CP比0.028)を給与したアミノ酸バランス法(AB)区とした。両区の豚は体重約116kgまで飼育し,と畜した。日増体量は両区で約800gと同等の値を示した。背脂肪厚,歩留,格付を含む枝肉形質も両区で類似していた。肉質では,胸最長筋の筋肉内脂肪含量が対照区3.14%に比べAB区で6.22%と約2倍に増加した(P<0.01)。また,対照区に比べAB区において肉のL*値が増加し(P<0.05),加熱肉のテンシプレッサー測定値であるTendernessと Toughnessが低下した(P<0.01)。脂肪酸組成では対照区に比べAB区で筋肉内脂肪や皮下内層脂肪のC18:1割合が主に増加し(P<0.05),一価不飽和脂肪酸割合も増加した(P<0.05)。筋肉内脂肪細胞の直径と面積は対照区に比べAB区で増加した(P<0.05)。分析型官能評価では,対照区に比べAB区でやわらかさ(噛切時)が増加し(P<0.05),風味の強さ,オフフレーバーが低下する傾向を認めた(P<0.10)。以上より,高タンパク質でLys/CP比の低いアミノ酸バランス法を適用した飼料の給与により,元来,脂肪交雑の多いデュロック種でも主に脂肪細胞の肥大により筋肉内脂肪含量が顕著に高められ,筋肉内脂肪および皮下内層脂肪のC18:1割合や一価不飽和脂肪酸割合を高め,やわらかさを増加させることが示された。

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© 2019 日本養豚学会
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