教育心理学研究
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同学年モデルの観察および観察されるモデルとなることが, 大学生の保育実技の「準備」・「自己効力」に及ぼす効果
田中 幸代
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2006 年 54 巻 3 号 p. 408-419

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抄録

本研究では, 保育士資格取得のために保育実習を行う予定の学生を対象として, 大学の授業場面において, 同学年モデルの保育実技を観察すること, およびモデルとなることが, 学生の8種類の保育実技の準備および自己効力に及ぼす効果を検討した。また, モデルが事前の準備に費やした時間, 熱心度, 示範に対する自己評価, 観察者の反応が, モデルの自己効力にどのような影響を及ぼすのかも検討した。その結果,(1) 同学年モデルを観察することによって, 学生の保育実技の準備や自己効力の程度は高まることがある。しかしながら, その効果は観察する保育実技の種類によって違いがある,(2) モデルとして示範する経験は, 示範する保育実技の種類にかかわらず, 学生の保育実技の準備や自己効力の程度を高める,(3) モデルが, 示範の準備に時間をかけて取り組んだり, モデル自身が示範に対する観察者の反応が良いと感じることで, モデルの自己効力はさらに高くなる, ことが示された。これらの結果は, 大学の授業において, 同学年モデルを観察したり, モデルとして示範する経験が, 学生の学習効果に寄与する可能性があることを示唆している。

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© 日本教育心理学会
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