教育心理学研究
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不安条件下において他人の存在がおよぼす社会的親和動機の喚起に関する研究
那須 光章
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1975 年 23 巻 3 号 p. 143-153

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抄録

高校3年生の男女 (17-18才) を被験者として, 不安条件の有無と同席する相手の有無によって4実験群を作り, TAT物語の分析によって, パーソナリティレベルとしての親和傾向と状況・場面によって喚起されるところの親和動機を測定した。そして併せて, 顕在不安検査 (MAS) と自己評定検査 (S. R. 表) を集団実施して, 個人の不安傾向と自己評価の程度を求め, 親和傾向, 親和動機づけとの関連性をみてみた。結果は次の通りであった。
(1) 不安条件では男女とも1人で存在する場面と異性と同席する場面において強く動機されるが, その程度は女子の方が著しい。特に, 女子では不安条件を設定しなくても, 1人でいる場面におかれると親和動機が喚起される。
(2) 不安傾向の男女差は有意ではない。不安条件下において, 男子は高不安傾向のみ, 女子は不安傾向の程度に関係なく親和動機づけされる。
(3) 否定的な自己評価 (低PS) 自己像に関する現実認知と理想のズレが大きい (高D (P-1)), 現実認知の自己像と他者から観察されていると考える自己像のズレが大きい (高D (P-O)), 自己評価に確信がない (PSの中心偏度が大きい) の4つの自己評価の程度が高親和傾向と関係している。
(4) 不安条件下では, 自己評価に確信が持てない者は, 親和動機づけされやすい。
(5) 親和傾向の男女差は有意ではない。親和動機づけは女子が男子より強い。

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© 日本教育心理学会
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