教育心理学研究
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重文の理解に及ぼす文脈的手がかりの効果
小野寺 淑行
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1974 年 22 巻 3 号 p. 144-153

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抄録

文の理解の過程は含まれていると考えられる文脈的手がかりの利用に関して, 日本語の重文を材料とし, 大学生を被験者に次の2つの実験を行なった。
実験Iにおいては, 材料は“表述 (1)+接続助詞+表述 (2)”という形態の重文であった。被験者は表述 (1) と接続助詞だけを聞いて表述 (2) の内容を推測することを求められた。あちかじめ,“表述 (1) ならば表述 (2)”(表述《1》,《2》は肯定形) という含意命題を記憶していたIP群の被験者においては, 表述 (1) が肯定形であるよりは否定形である方が, また, 接続助詞が順接であるよりは逆接である方が反応時間が長く, 誤反応数も多かった。含意命題を記憶する代わりに, すべての文に対してあらかじめ1度ずつ正答を提示されるAP群においても, 結果はほぼ同様であった。両群を通じて, 反応時間は主に順接と逆接の相違に対応して変動した。
実験IIでは, 材料の一般形態は“表述 (0)+表述 (1)+その時+表述 (2)”であった。表述 (0) は“その時”が順接または逆接のどちらに対応しているかに関する情報を, 表述 (1) に先行して与える。反応時間に関する結果は, 実験 Iの場合と同様であった。結果は, 主として逆接の処理が含意命題の文章表現との照合, それとの接続助詞における不一致の調整を含むなど, 複雑であることによるものと解釈された。

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