教育心理学研究
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幼児の概念移行学習におよぼす先行訓練量の効果
藤田 正
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1974 年 22 巻 3 号 p. 137-143

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抄録

本研究は幼児の概念移行学習におよぼす先行訓練量の効果を検討するために計画された。
2 (移行型)×3 (先行学習の訓練量)×2 (各概念内の事例数: 項目条件) の要因計画が用いられた。被験者は平均5才9か月の幼児120名であった。彼らは継時的に呈示される絵刺激を2つのカテゴリー (例えば, 動物と果物) に分類する問題を, 3つの訓練基準 (連続4回正反応, 連続8回正反応, 連続8回正反応+24試行) のうちの1つに達するまで訓練された。被験者の反応に対しては,“よろしい”,“まちがい”といった言語的な情報が与えられた。先行学習のあと, 半数の被験者には全逆転移行問題が, 残り半数の被験者には半逆転移行問題が連続8回正反応の基準に達するまで与えられた。全逆転移行条件では, 被験者は先行学習で行なった分類の仕方を移行の段階で全く逆に変化させることを求められた。他方, 半逆転移行条件では, 被験者は移行の段階で先行学習で行なった分類の仕方の半分だけ変化させることを求められた。
主な結果は次のとおりである。
(a) 先行学習の訓練量の少ない段階では, 全逆転移行と半逆転移行の間に差はみられなかったが, 訓練量が増加するにつれて全逆転移行は促進され, 半逆転移行は抑制された。
(b) 概念的体制化の値は, 先行学習の訓練量が増加するにつれ大きくなった。
(c) 全逆転移行のそれぞれの訓練段階における項目条件の成績は, 4回群では8項目条件が4項目条件よりも悪かったが, 8回群と8十24回群では両方の項目条件に有意な差はみられなかった。
以上の結果は過剰訓練が概念的な媒介反応を強めるという仮説を支持するものとして解釈され, 従来の研究と関連させて考察された。

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