教育心理学研究
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児童の意見文産出におけるマイサイドバイアスの低減
—目標提示に伴う方略提示と役割付与の効果に着目して—
小野田 亮介
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2015 年 63 巻 2 号 p. 121-137

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抄録

 マイサイドバイアスとは, 反対立場に有利な理由に比べ, 賛成立場に有利な理由が多く産出される傾向を指す。マイサイドバイアスが強い意見文は説得力, 信頼性ともに低く評価される傾向にある。そこで本研究では, 児童の意見文産出におけるマイサイドバイアスの低減を目的とし, 目標提示とそれに伴う方略提示, および役割付与の効果を検証した。4年生65名を対象とした予備実験の結果, 反対立場の読み手を想定するという条件下において, 児童は反論を想定するものの, その反論に対する再反論は十分に行わないことが示された。そこで, 5年生90名を対象とした本実験では, 反論への再反論を促すため, (1) 反対立場の優勢性の検討, (2) 理由の明確化, (3) 読み手に対する意識, を促進するための目標を与え, 目標提示のみが行われる「対照群」, 目標に加えて目標を達成するための方略が示される「方略提示群」, 目標と方略の提示に加え, 目標達成を義務とする役割が与えられる「方略・役割群」とで産出される意見文の比較を行った。その結果, 方略提示によって反論に対する再反論の産出数が増加し, さらに役割付与がその効果を促進することが明らかになった。

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© 2015 日本教育心理学会
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