2018 年 57 巻 p. 171-178
本研究では,近年の自閉症スペクトラム障害(ASD)における応用行動分析学をベースにした実践研究の動向を明らかにした。2012年から2017年までの国内における応用行動分析に関連した学術雑誌を対象とした。まず,(a)ASDを対象とする,(b)何らかの介入を行った研究などの規準を満たす論文を抽出した。次に,(a)執筆者や支援実施者の特徴,(b)支援の場,(c)支援対象者の人数と年齢,(d)標的行動,(e)維持と般化,(f)研究デザイン,(g)支援の文脈適合性と社会的妥当性,という7つのカテゴリに分類した。その結果,執筆者や支援実施者に教員や保護者のような関係者が含まれている論文が多く,支援の場についても,全体の69%が教育機関,自宅,施設,あるいは地域であった。また,支援の文脈適合性と社会的妥当性による連携を関係者と行っている論文も多かった。標的行動については,対人コミュニケーションや問題行動がどの年代においても多く該当した。ASDの実践研究において,教員や保護者のような関係者と丁寧に連携している研究のエビデンスが蓄積されていく必要性が示唆された。