教育心理学研究
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幼児における反復課題と非反復課題間での同一・差異学習の転移
中川 惠正
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1994 年 42 巻 4 号 p. 383-394

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抄録

本研究は, 3つの実験によって, 幼児における同一性/差性概念あるいは同異関係の習得のメカニズムを検討したものである。実験1では, 56名の幼児を対象にして, 同一/差異刺激を用いた試行単一刺激課題 (非反復課題) で習得した同一性/差異性概念の転移効果を検討した。その結果, 5歳児と6歳児の幼児はいずれも, 適切次元や大きさ弁別を手掛りにしないで同一性/差異性概念を習得し, それを後続の移行学習へ転移することが明らかにされた。実験2と3では, 反復課題である新奇性記憶課題で習得された同一性/差異性概念が非反復課題である同一/差異刺激を用いた試行単一刺激課題へ転移するか否か, そしてこの逆方向の転移も可能か否かが検討された。その結果, 反復課題で習得された同一性/差異性概念が非反復課題での同一性/差性概念の習得を促進した (実験2)。また非反復課題で習得された同一性/差異性概念が反復課題での同一性/差異性概念の習得を促進した (実験3)。
以上の本研究の諸結果は, 反復課題で習得された同一性/差異性概念と非反復課題で習得された同一性/差異性概念とが共通な基本的な過程を有することを明らかにしている。即ち, これらの結果は, 幼児が刺激布置に対する共通反応を基にして, 同一性/差異性概念を習得し, それを転移することを明らかにしている。

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© 日本教育心理学会
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